完全型プロトタイプ開発の費用と、本開発のコストへの影響

プロトタイプ段階でも費用はかかります。ただし、本開発のコストが下がる傾向があり、トータルで見ると合理的な選択になる場合があります。

プロトタイプにかかるコスト

完全型プロトタイプは「本番同等の機能を実装する」ため、画面デザインのモックアップや簡易なPoC(概念実証)よりも費用がかかります。プロジェクトの規模によっては、プロトタイプだけで数十万〜数百万円の費用が発生するケースもあります。「お試しのために作るもの」という感覚とは異なります。

一方で、このコストはプロトタイプ単体で消費されるわけではありません。プロトタイプで確認・修正した内容が本開発の土台になるため、プロトタイプにかけた費用は本開発に引き継がれます。

本開発のコストが下がる傾向がある理由

完全型プロトタイプ開発を経ることで、本開発の費用が下がる傾向があります。

仕様変更が減る

プロトタイプで業務フローを確認しているため、本開発中に「やっぱりこう変えたい」という仕様変更が起きにくくなります。開発中の仕様変更はコストが高くなりやすく、スケジュールにも影響します。プロトタイプ段階で洗い出せる問題は、そこで対処する方が安くなります。

不要な機能を除外できる

プロトタイプを触りながら業務フローを確認すると、「これは実際には使わない」「この機能は別の方法で対応できる」という発見があります。システムに搭載した機能の6割以上がリリース後にほとんど使われないというデータがあります。不要な機能を本開発前に除外することで、開発費用を直接削減できます。

認識ズレによる手戻りが減る

発注側とベンダーが動くものを見ながら合意しているため、「言葉の解釈のズレ」で起きる手戻りが減ります。手戻りはコストとスケジュールの両方に影響します。特に、開発の最終段階である受け入れ時に認識のズレが発覚すると、修正コストが高くなるうえ、スケジュール全体に影響するリスクがあります。

リリース後の追加修正が減る

本開発後の修正・追加機能の開発は、初期開発よりも割高になりやすいです。プロトタイプで問題を先に潰すことで、リリース後に大きな修正が入る確率を下げられます。

トータルで考える

「プロトタイプのコスト+本開発のコスト」でトータルを見ると、プロトタイプなしで進めた場合と大差ないか、むしろ合計が下がるケースがあります。

プロトタイプなしで進めた場合に多いのは、本開発の終盤に大きな仕様変更が入ってスケジュールと費用が膨らむパターンです。プロトタイプはその問題を早い段階に前倒しする投資と考えると、合理的な判断になります。

ただし、仕様がすでに明確な案件では、プロトタイプの効果が薄くなります。すべての案件でプロトタイプが得になるわけではなく、状況に応じた判断が大切です。向いている案件かどうかは完全型プロトタイプ開発が向いている企業・向いていない企業も参考にしてください。