準委任契約(SES)の罠――残業・休日出勤で膨らむ費用

「なぜかこのSESメンバーが入ってからプロジェクトが遅れはじめた」。そう気づいたときには、すでに手遅れだった。


SESの本来の役割

PMが自社のリソースだけでは足りないとき、SES(システムエンジニアリングサービス)を活用することがあります。

SESの本来の役割は、プロのエンジニアが技術支援という形でスキルを提供することです。自社に不足している開発力を補い、プロジェクトを前進させてくれるパートナーとして機能します。

実際、そのように誠実に働いてくれるエンジニアやSES会社のほうが多数です。


技術より売上を優先するケースもある

しかし中には、技術支援よりも売上を最大化しようとするエンジニアやSES会社が存在します。

その方法として多く使われるのが、残業と休日出勤 です。

SESの料金体系の多くは「月120〜160時間程度の固定時間幅」を基本とし、その範囲内の費用を月額で支払う形式です。ところが、固定時間を超えた残業時間には割増料金が、休日出勤にはさらに高い割増料金が発生します。


プロジェクトをわざと遅らせる

悪意あるケースでは、担当エンジニアがプロジェクトをわざと遅らせます。

タスクの消化ペースが遅い、不必要に手戻りが発生する、確認事項が増える、作業の見通しが立たない――こうした状況が積み重なり、プロジェクトは遅れていきます。

遅れを取り戻すため、PMはSESエンジニアに残業や休日出勤を依頼します。エンジニアにとってはこれが狙いどおりです。残業・休日出勤の時間分だけ請求額が増えるからです。

このサイクルが膨らんでいくと、最終的な費用は予算をはるかに超えた金額になります。

こうした状況が発生する背景のひとつに、準委任契約は成果物の完成を保証しない という特性があります。システムが完成しようが、未完成のままプロジェクトが終了しようが、エンジニアには直接関係がありません。作業した時間分の報酬は確実に受け取れます。請負契約とは異なり、「完成しなければ支払わない」という交渉はできないのです。

この契約特性を悪用すれば、作業時間を引き延ばすインセンティブが生まれてしまいます。


問題に気づきにくい理由

厄介なのは、この状況が「単純なスキル不足」と区別しにくい点です。

進捗が遅い理由は、技術力の問題かもしれないし、タスクの複雑さかもしれない。残業が増えているのは、本当に業務量が多いのかもしれない。PMが現場の詳細を把握しきれていない場合、判断が難しくなります。


回避策と対処法

複数社からメンバーを集める ことは有効な抑止策になります。同一プロジェクト内に複数のSES会社のメンバーがいれば、一社が意図的に遅らせても他のメンバーとの進捗比較ができ、異変に気づきやすくなります。

エンジニアのスキルと進捗を定期的にチェックする ことも重要です。週次で成果物を確認し、タスクの消化速度が著しく遅い場合は早めに原因を追求してください。

問題が特定のエンジニアにある場合は、SES会社にメンバー変更を求めることを検討してください。 SES契約では、作業の品質についてSES会社が責任を負います。クレームを入れてメンバーを交代してもらうことは、契約上正当な対応です。

SESを活用する際は、信頼できるパートナーを見極める目と、問題が起きたときに適切に動ける準備が必要です。