安いからオフショアにした

単価は確かに安かった。ただし、それ以外のすべてが想定外だった。

オフショアを選んだ理由

国内の開発会社に見積もりを取ったところ、想定予算を大きく超える金額が出てきました。そこで、費用を抑える選択肢としてオフショア開発を検討することにしました。

ベトナムやインド、中国などのエンジニアを活用するオフショア開発は、国内単価の3分の1から半額程度で発注できると言われています。実際に複数の仲介会社に問い合わせたところ、エンジニア単価は確かに国内の半額以下でした。「同じ品質のものが安く作れる」と判断し、発注を決めました。

蓋を開けると

プロジェクトが進むにつれて、想定していなかったコストが積み上がっていきました。

ブリッジSEとのやりとり:オフショアチームと日本側の橋渡しをするブリッジSE(BrSE)との打ち合わせが週複数回発生しました。仕様の説明、確認、フィードバックのループが国内開発より長く、自社の担当者が費やす工数が増えていきました。

仕様の解釈ズレ:画面の仕様書を渡したところ、意図と異なる実装が上がってきました。「なぜこうなったのか」を確認すると、仕様書の表現が曖昧だったことが原因でした。国内であれば口頭確認で解決できる内容が、文書化と翻訳を挟むことで伝達コストが増大していました。

時差と対応速度:進捗確認や修正依頼の回答が翌日になるケースが多く、問題が発覚してから修正されるまでのサイクルが伸びました。スケジュールが当初計画より2ヶ月以上延伸しました。

品質の確認負担:納品物のテストを自社で行うことになりましたが、バグが多く、修正のやりとりに時間がかかりました。品質管理を仲介会社に任せていたつもりが、実質的には自社で引き受けていた形でした。

合計すると

最終的にかかったコストを積算すると、エンジニア単価は安かったものの、以下の要素が加算されていました。

  • ブリッジSEへの仲介費用
  • 自社担当者が費やした時間(スケジュール管理・仕様調整・テスト)
  • スケジュール延伸による機会損失
  • 一部の機能を国内で作り直した費用

結果として、当初国内開発の見積もりより高い総コストになりました。

オフショアが合うケース、合わないケース

オフショア開発が費用対効果を発揮するのは、条件が整った場合です。

合いやすいケース

  • 仕様が細部まで文書化されており、変更が少ない
  • 既存の仕組みをベースにした開発で、仕様のブレが小さい
  • 自社にブリッジSEの役割を担える人材がいる、または信頼できる国内の管理会社がいる
  • 長期的な付き合いのなかでチームの特性を把握している

合いにくいケース

  • 要件が曖昧で、開発中に仕様が変わる可能性が高い
  • ユーザーヒアリングや現場確認を繰り返しながら作る必要がある
  • 発注側に仕様管理・品質確認のリソースがない
  • 短期のプロジェクトで関係構築の時間がない

単価だけで比較しない

オフショア開発の費用を評価する際は、エンジニア単価だけを見ても意味がありません。総コスト(TCO:Total Cost of Ownership)で比較する必要があります。

自社の担当者が費やす工数を時給換算し、ブリッジSEや仲介会社のコストを加え、スケジュール延伸のリスクを考慮したうえで、国内開発との差がどれほどあるかを見積もることが判断の出発点です。

「単価が安い」は、コストが安いことを意味しません。