データ移行の「人件費」を見落とすな:1万件のデータ整備に要する工数と外注単価
新しいシステムを導入する際、意外と見落とされがちなのが「データ移行」のコストです。ベンダーの見積もりに「データ移行支援」という項目があっても、それはあくまで「データの流し込み」の費用であり、その前の「データの整理(クレンジング)」は発注者の責任とされることがほとんどです。
1万件のデータを「手作業」で直すといくらかかるか?
例えば、10年前から使っている顧客名簿1万件を、新しいCRM(顧客管理システム)に移行する場合を考えてみましょう。
- 住所の表記ゆれ(1丁目2番 vs 1-2)の統一
- 電話番号のハイフンの有無
- 重複した顧客データの統合(名寄せ)
- 担当者名が抜けているデータの補完
これらを1件あたり平均3分でチェックし、修正するとします。 10,000件 × 3分 = 30,000分 = 500時間
社員が通常業務の合間に行うのは不可能です。派遣社員や外注を雇うと、時給2,000円としても 100万円のコスト が、開発費とは別にかかる計算になります。
データ移行を「コストダウン」するための戦略
データ移行のコストを抑えるには、以下の3つの判断が必要です。
- 「全部」移行しない: 過去10年のデータを全て持っていく必要はありますか?「直近2年分だけ」と割り切るだけで、工数は激減します。
- 「汚いデータ」は捨てると決める: 不完全なデータは無理に直さず、新システムで取引が発生した都度、最新情報を入れ直す運用にする。
- 初期投資として「名寄せツール」を使う: 手作業で100万円かけるなら、50万円で名寄せツールを導入したり、AIによる自動変換を活用した方が安く、精度も高まります。
「ゴミを入れたら、ゴミが出てくる」
IT業界には「GIGO(Garbage In, Garbage Out)」という言葉があります。どんなに高価なシステムでも、中身のデータがバラバラであれば、正しい分析も効率的な業務も不可能です。
データ移行の工数を「現場が頑張ればなんとかなる」と楽観視せず、立派なIT投資の一部として、予算と時間を確保してください。この準備を怠ると、新システムは稼働初日から「使いにくいゴミの山」になってしまいます。