同じシステムなのにベンダーによって金額が大きく違うのはなぜ?

複数のベンダーに見積もりを依頼したら、金額が10倍近く違った――このような経験を持つ発注者は少なくありません。なぜそんなに差が出るのか、理由を解説します。

前提として「同じシステム」は存在しない

まず知っておきたいのは、同じ要件書を渡しても、ベンダーによってまったく異なる設計・実装方針で見積もりが出てくる、という点です。「在庫管理システム」と一言で言っても、使う技術・設計の粒度・品質水準・テストの厚みはベンダーごとに異なります。金額の差は、多くの場合「解釈の差」から生まれています。

金額が変わる主な要因

1. 要件の解釈の違い 「使いやすいUIにしてほしい」「スムーズに動くように」といった曖昧な要件は、ベンダーによって工数の見積もり方が大きく変わります。丁寧に要件を読み込んで積み上げるベンダーと、過去の経験でざっくり出すベンダーでは、同じ依頼でも見積額が変わります。

2. 体制・スキルの違い 大手SIerはPM・SE・PG・テスターを分けた体制で動くため、人件費が多く乗ります。一方、少人数のスタートアップや個人のフリーランスに近い事業者は、同じ成果物をより低いコストで提供できることがあります。どちらが良い・悪いではなく、コスト構造が違います。

3. バッファ(リスク費用)の乗せ方 経験の少ない開発会社や、初めての取引先との案件では、リスクを見越して多めに見積もることがあります。逆に「受注したい」という意欲から、リスクを低く見積もりすぎてしまうケースもあります。

4. 保守・運用費の含め方 初期費用を安く見せて、保守・運用フェーズで費用を回収する構造になっているケースもあります。見積もりに何が含まれているか(保守・テスト・ドキュメント・教育など)を確認することが重要です。

安い見積もりが「お得」とは限らない

金額が低い見積もりを選んだ結果、追加開発費用が膨らんだり、品質に問題が出たりするケースは珍しくありません。見積もりを比較するときは「何が含まれているか」を揃えて比べることが大切です。

金額差を正しく判断するために

  • **RFP(提案依頼書)**を作り、要件を明確にしてから複数社に依頼する
  • 見積もりに含まれる作業範囲を各社に確認する
  • 最安値よりも「なぜこの金額か」を説明してもらえるベンダーを選ぶ

金額の差は「どちらかが間違い」ではなく「前提が違う」ことがほとんどです。比較するなら、前提を揃えることから始めましょう。