IT化成功の裏側ではこんなことが
経営層は「IT化戦略は正しかった」と確信した。ただ、その根拠となった評価は、現場の本音ではなかった。
熱量は上から下へ、本音は上に届かない
あるプロジェクトで、経営層が先陣を切って業務のIT化を推進しました。旗振りも予算も経営層主導で、現場のユーザーたちは半ば押し流されるように新しいシステムへの移行を進めることになりました。
IT化の効果を測るため、現場のユーザーたちに評価の作成が命じられました。「実際に使ってみてどうだったか、正直に書いてください」という指示でした。
現場のユーザーは正直でした。新しいシステムは現行の業務フローと合っておらず、むしろ作業負担が増えていました。そのまま低い評価を現場長に提出しました。
「こういう観点で考えてみて」
ところが、現場長の反応は予想外でした。
「上が力を入れてるプロジェクトなので、この評価は困るんだよね」
現場のユーザーは戸惑いながらも説明しました。「実際に業務に合っていないので、これ以上の評価はできません」と。
しかし現場長は引きませんでした。「これじゃなくて、こういう観点で考えてみて。そうしたらもっと高い評価になるんじゃない?」
何度かそのやり取りが繰り返されたのち、現場のユーザーは折れました。訂正された評価が提出されました。
経営層の笑顔と、現場の今
その評価を見た経営層は大いに喜びました。
「私たちのIT化戦略は正しかった。この結果がその証拠だ」
会議室では成功体験として共有され、スライドには高い評価数値が載りました。
そして今日も現場では、業務に合わないシステムのために、以前より多くの時間をかけて仕事をしています。評価の数値はきれいでも、現場の負担は地味に増え続けています。
IT化の成否は、数字だけでは測れません。 現場から正直なフィードバックが上がってくる環境があるかどうかも、IT化を成功させるうえで重要な要素のひとつです。