提案書は完璧だった。実行できる会社ではなかっただけで。
提案書は完璧だった。200ページにわたるグローバルベストプラクティスが、美しいグラフとともに並んでいた。
※ なお、この話に登場する「コンサルタント」は都市伝説上の存在です。実際のITコンサルタントのみなさんは誠実にお仕事をされています(おそらく)。
よくある経緯
経営課題を解決するためにコンサルティング会社を起用します。数ヶ月の調査・分析を経て、海外の先進事例をもとにした包括的な提案書が完成します。プレゼンは洗練されており、内容に反論の余地はありません。
しかし実行フェーズに入ると、問題が続出します。
ミーティングだけは超一流だった
プロジェクト期間中のミーティングは、毎回洗練されていました。スライドは美しく、アジェンダは明確で、進行はスムーズです。そして必ず序盤に、こんな一言が添えられます。
「一度、これまでのことは全て忘れてください」
これまでの業務・慣習・常識をいったんリセットして、白紙から考えましょう——という文脈で使われる言葉です。言いたいことは分かります。ただ、「これまでのこと」の中には、10年かけて積み上げた顧客との関係や、業界特有の商慣習や、3人で回している現場のリアルも含まれています。
忘れた後に残るのは、グローバルスタンダードに基づいた美しいフレームワークと、それを実行する術を持たない自社でした。
「正しいが、実行できない」提案の特徴
規模感が合っていない:従業員20人の会社に、数百人規模の組織を前提とした業務プロセス改革が提案されることがあります。担当者・専任チーム・予算が前提として組み込まれており、自社の実態とかけ離れています。
グローバル事例の直輸入:欧米の大企業で成功した施策が、そのまま日本の中小企業に当てはめられます。文化・商慣習・組織構造の違いは「現地対応が必要」という一文で片付けられています。
実行フェーズはスコープ外:提案書を作ることがプロジェクトのゴールになっており、「どう実行するか」は自社が考えることになっています。提案内容が正しくても、実行する人・スキル・予算が自社にない場合、提案書は読まれないまま棚に並びます。
現場の実態が反映されていない:ヒアリングは経営層や部門長のみで、現場担当者の声が十分に収集されていないことがあります。「上から見た課題」と「現場で起きている課題」はズレていることが多いです。
コンサルタントを活用するための条件
コンサルタントが有効に機能するのは、発注側にも一定の条件が揃っている場合です。
- 何を解決したいかの課題が具体的に定義されている
- 提案を受け取った後に実行できる体制・予算がある
- 提案内容を評価・取捨選択できる社内の人間がいる
- 「提案してもらうこと」ではなく「問題を解決すること」がゴールになっている
提案書のクオリティは、実行結果とは別物です。「良い提案書=良い結果」ではなく、「実行できる提案書=良い結果」です。外部の知見を借りる前に、自社が何を求めているかを明確にしておくことが、コンサルタント活用の前提条件になります。
※ 本記事に登場する「コンサルタント」は、あくまで都市伝説の世界に生息する架空の存在です。現実のITコンサルタントは、現場を深く理解し、顧客の抱える課題を見つけ、最適で最善な提案を行い、誠実に支援されている方ばかりです。たぶん。。。